私はこう思う!

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次世代へのエネルギー教育に期待

日景 弥生氏 yayoi hikage
弘前大学教授

「原発反対!」これは、多くの学生達の考えである。

2年に1度、一般教養の講義を受け持つ機会がある。一昨年の受講者は、東日本大震災直後ということもあり、原発反対者はいつもに比べ多かった。この講義の目標は、環境視点から生活を多面的にみることにより、環境視点を取り込んだ生活を営むことである。

そのため、講義は、意図的に学生自身の生活行動とエネルギーとの関連を意識させながら展開する。すると、原発反対者の彼ら彼女らは、自身の生活行動が「原発反対」とはほど遠いことに気づく。学生達は、講義の展開とともに、生活にエネルギーが不可欠であることを理解し、エネルギー消費を抑制する生活を模索し、エネルギーの将来を考え始め、安易に「原発反対」とは言わなくなる。つまり、科学的知識を得ることで、学生達の意識は変容していく。

このような科学的根拠に基づいた正しい、適切な知識を学ぶ学習機会を保障することが、今の日本では重要なことと思うが、残念なことに市民に対する学習機会は少ない。学習機会はあっても、科学的根拠に基づいた情報を得られないこともある。そのため、市民はその情報(場合によっては誤った情報)を鵜吞みにしたり、そのまま第三者に伝達してしまう場合がある。さらに、研究等の進展により正しい情報が変化しても、市民はそれを学ぶ機会がないため情報の入れ替えができず、誤った情報をもち続けることになる。

しかし、朗報もある。2012年度から実施されている学習指導要領中学校理科には、「エネルギー資源の利用や科学技術の発展と人間生活とのかかわりについて認識を深め,自然環境の保全と科学技術の利用の在り方について科学的に考察し判断する態度を養う」と記載され、原子力が明記された。これにより、次世代へのエネルギー教育の進展が期待される。次世代育成に携わる一人として、微力ではあるが着実に歩みをすすめたい。

(2013 年3 月末)

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