私はこう思う!

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もう一度考えてみよう“原子力”

芦野 英子氏 eiko ashino
エッセイスト

3.11の福島第一原子力発電所の事故以来、原子力は悪魔のような嫌われ方で、それについて話すことさえも白い眼で見られるようになった。

しかし、第一次オイルショックのあと、どのようにして原子力が重要視され、社会に受け入れられたのかを考えると、この資源の少ない島国の日本でこれからのエネルギー源として原子力が有効なものとして容認されたことは確かな事実である。

この約40年間私は、日本全国の発電所、それに関連する事業所を視察研修し、また放射線の利用について医療をはじめ工業、農業それぞれ大いに必要とされている事実なども知った。

各地で開催されるフォーラムやシンポジウムなどにも参加した。それなりの学習はしたと思っている。3.11以後の安全基準で見直され、それぞれの対策に取り組んだ各発電所の現在も勉強した。

厳しい審査を受け、再稼働が認められた発電所が、一般の人の反対に遭ったり、地元市町村の人たちの理解を得られないという現実もあると知った。

6月初旬に、私は鹿児島県にある九州電力川内原子力発電所へ行って来た。テロ等重大事故に対する対策として4月に委員会から容認された内容がどんなものだったのかと、私は一番気になっていた。高い外壁でも?などと考えていたのだが、そうではなく、あくまでも内部の、例えば放射性物質の拡散抑制対策、格納容器の破損防止対策、炉心損傷防止対策などの補強であった。さらに内部溢水に対する考慮、電源の信頼性向上など多くの対策が新しく設けられていた。

原子力発電がベストだとは考えていない。しかし既存のものにさらに多額の費用を投入して必要な補強をした現在の原子力発電所は信頼しても良いのではないか。その上でベストミックスの方法でエネルギー確保を目ざす。

送電線で他国とつながっているヨーロッパと違い、わが国は自国の生きる道を探すしかない。ここは冷静に熟考しなければと思う。

(2017年6月末)

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