私はこう思う!

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エネルギー問題と若者

北山 淑江氏 yoshie kitayama
新潟大学名誉教授(理学博士)

毎年9月末にETTの協力を得て、大学2年生約80人を対象に「エネルギー講演会と見学会」を開催している。昨年9月末も例年通り開催し、「化学者あるいは化学技術者としてエネルギー環境問題にどのように貢献できるか」と題してレポートを書いてもらった。感想文80編を読むと非常に真面目にエネルギー問題を考えていることが分かった。東京電力福島第一原子力発電所の事故後、脱原発が叫ばれているにも拘わらず、ほとんど全員が脱原発は無理だと書いているのは興味深い。彼らは、温室効果ガスの排出、資源問題などに言及しながら、ヨーロッパ諸国との事情の違いにも触れ、脱原発は原子力発電に代わる技術が開発されない限り無理だと考えている。マスコミの報道に扇動されることなくエネルギー問題を考えている二十歳の若者がいることに心強さすら感じた。

新潟県内には、7基の原発がある。東日本大震災をきっかけに原子力の安全性に懸念を抱くかなと思っていたが、安全性を高めて原発は動かすべきだという学生が大多数だった。エネルギー・環境問題に対する関心はかなり強くなったような気がしている。

地震後、原子力規制委員会が発足したが、原子炉の専門家がいないため活断層の議論のみで、原子力発電所の安全性に対する議論に取り組んでいるとは考えにくい。アメリカの安全委員会は、ベントの弁の改良と非常事態で原子炉の停止後72時間電源がなくても、冷却できるよう提案している。テレビで地元住民の一人が「大学の先生か何か知らないけれど、たった2日来て土を掘り返しただけで、何が分かるか?」と言っていたのが印象に残っている。今ある原子炉を安全に運転するための前向きな議論を進めて欲しいと思うのは、私だけだろうか?このままでいくとまさに「宝の持ち腐れ」となってしまう日本の原子炉。国際語となった「もったいない」という言葉を嚙締めてみませんか。

原子力規制委員会のホームページで最近やっと発電用原子炉の新安全基準の検討に関する情報の公開がはじまった。

(2013 年1 月末)

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