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消費者教育、エネルギー環境教育の推進に向けて

浅野 智恵美氏 chiemi asano
NACS消費生活研究所主任研究員/環境カウンセラー

地球温暖化をはじめとした環境問題や経済社会の生み出す様々な問題が、産業活動のみならず消費活動から派生しています。私たちは今、未来に向けて持続可能な社会を形成する必要に迫られています。

社会の変化に伴い変容する消費者問題に対応し、消費者が消費生活に関する知識を習得し、適切な行動に結び付く実践的能力を育む消費者教育は不可欠です。2009年11月にOECD 消費者政策委員会が消費者教育の政策提言をまとめた際、持続可能な消費を重要課題として位置付け、国際的に取組の必要性が示されました。2012年施行の消費者教育推進法は消費者市民社会を提唱し、「自らの消費生活行動が現在・将来世代にわたり、内外の社会経済情勢及び地球環境に影響を及ぼし得ることを自覚し、公正で持続可能な社会の形成に積極的に参画する社会」と明記しています。

幼児期から高齢期までの生涯を通じて、学校、地域、家庭、職域など様々な場で総合的に消費者教育が推進されることが必要です。そのためには、国連が提唱したESD「持続可能な開発のための教育」の理念を取り入れた消費者教育、エネルギー環境教育の更なる推進が望まれます。ESDは持続可能な社会づくりの担い手を育む教育であり、地球的な視野をもつ市民の育成を目的としています。

しかし、ESDと消費者教育の関連性が希薄、消費者教育に割かれている時間が少ない、教科横断的に関連付けて実施されていない、教員の指導力向上だけでは限界があるなど多くの課題が散見されます。ライフスタイルを見直すとともに、環境に配慮した暮らしに責任を持ち、私たちの選択と行動が今後のエネルギー政策や持続可能な暮らしを左右することを自覚する必要があります。

資源・エネルギーの枯渇、一般廃棄物から放射性廃棄物など様々な環境問題が私たちの暮らしを取り巻いています。今を生きる子供たちが、生活に関わる様々な知識と的確な判断力を身に付け、持続可能な社会の一員として省資源・省エネルギー等に取り組むためにも、垣間見える課題を取り除き、ESDの理念を取り入れた「生きる力」を実践的に身に付ける力を育む消費者教育、エネルギー環境教育の一層の充実を期待しています。

*ESD:Education for Sustainable Development

(2016年10月末)

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