私はこう思う!

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地震に見舞われ思うこと

新野 良子氏 yoshiko arano
柏崎刈羽原子力発電所の透明性を確保する地域の会初代会長
柏崎市男女共同参画審議会会長

久しぶりの揺れだった。目の前の2台のスマホから地震警報が、続いて防災無線も鳴りだし、直ぐに横揺れがきた。震度3〜4程度かと思いテレビを見ると震源は山形沖らしい。少し距離があると思った矢先、今度は防災無線から聞きなれないラッパのような音の津波注意報が出され、1mの津波に注意するよう頻繁に深夜まで呼びかけが続いた。まだ課題は残るものの、数分の間に相次いで出された警報や情報には感慨無量であった。

「地域の会」は東電の不祥事を契機に自治体から提案され、2003年に設立された世界に類のない組織と言われる。始めから12年間の在籍中に様々な事故や不祥事、水害や雪害、2度の大地震、最後に東日本大震災まで起き、後半では防災について絶え間ない議論が続いた。会の目的は地域住民とオブザーバーである東電、規制当局、自治体等との信頼回復にもあるが、福島第一原子力発電所の事故でその理解や改善が程遠いものであったことが露呈し、愕然としたことを思い起こす。

福島第一原子力発電所の事故で、それまで課題は柏崎刈羽地域特有のこととされていたが、立地周辺の人々も我が事と捉え始め、原子力発電の問題を多くの国民が知ることとなり、やっと防災が住民のためのものとの認識にたち、今回の新潟・山形地震のスピーディーな初期対応にもつながってきたように思う。だが、今回も東電の初期情報にミスがあり、これまで「地域の会」が取り組んできたコミュニケーションの課題とも重なって、再び立地地域と東電や規制庁間で、捉え方の温度差が露呈することとなった。そして、その後の対応は以前より速やかそうだが、仕組みにも未だ課題を残す。安心安全に終わりはない。だから付かず離れず継続した関係性とウオッチングが欠かせない。

コミュニケーションは互いに考えが異なろうとも、その必要な基礎情報をより多く持ち合うことにより議論や理解、納得が深まるように思う。国民にとって重要な原子力発電や他の課題解決にも、その情報や議論が立地や地域に偏らず、より多くの国民と共有し、 互いの立場を尊重しながら多くの人々の関心を高めていくことが重要なのだろう。

こうしてみるとETTはエネルギー問題を幅広く捉え、国民目線で情報を集めて勉強や議論を重ね、それをまた全国にフィードバックしていく貴重なチームだと思う。そして、このチームの企画や運営に尽力くださる方々や組織に感謝したい。

(2019年7月)

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