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柏崎刈羽原子力発電所

北山淑江氏 yoshie kitayama
新潟大学名誉教授(理学博士)

私にとって柏崎刈羽原子力発電所の見学は2004年、中越地震後のETTメンバー見学会以来15年ぶりであった。毎年開催しているETTの地域支援事業では、最初の数回は柏崎刈羽原子力発電所の見学であったが、テロ対策が問題にされて以後、発電所の方で90人という多人数では対応不可能ということで、建設当時は日本で最大熱効率といわれた東北電力東新潟火力発電所とLNGの輸入基地日本海LNGとをセットにした見学会を続けてきた。しかし今回、柏崎刈羽原子力発電所が見学を受け入れて下さることになり、84名の学生と引率教員・関係者総勢91名での見学会が実現できた。

見学対象の学生のほとんどが20歳で大学2年生、専門的な知識を身につけ、化学技術者を志している若者だ。見学後の感想文を読むと、まず原子力発電所を実際に見たのは初めてで広大な敷地に圧倒され、セキュリテイーチエックの厳しさに驚いていた。柏崎刈羽原子力発電所の現状は、本来電気を送るための電線に火力発電所からの電力を受け入れて、安全確保のための作業が進められている。

事前の講演で発電所の建設は時間がかかること、日本のエネルギー自給率は約9%、火力発電は多量のCO2を排出することを知っている。また、再生可能エネルギーの限界もわかっているが、福島の事故以来原子力発電所の危険性だけが報道されたため、非常に懐疑的になっているのも確かである。今回の見学で東日本大震災後の原子炉への安全対策がなされている現場を初めて見学することによる収穫は大きかったように思う。

報道が唯一の情報源である一般の若者へ現場を見せることによる効果は大変大きいと思う。原子力発電への賛否は各人により異なるであろうが、きちんとした根拠のある意見を持ってほしいと思う。そのためには将来を担う若者への啓発を十分おこなうべきではなかろうか。多人数の見学会に際し、総勢で対処して頂いた柏崎刈羽原子力発電所の現場の方々には感謝している。貴重な体験だったと学生は受け止めてくれたようだ。

(2019年10月)

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